Seize the Moment.米中枢テロ後のブッシュ政権の外交政策」

ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ 研究員  坂田 和則 

@[ピンチをチャンスに変えるブッシュ陣営]

 ブッシュ大統領は、9月11日に起きた同時多発テロ(本土攻撃)を受けたことを活用して、米国保守本流が考える「新世界秩序」づくりを一気に推し進めようとしている。

 具体的には、中東和平の大きな前進、マネー・ロンダリング監視強化(麻薬や武器密輸資金などの世界のアングラ・マネーの監視・取締り強化)、イランも含む、アラブ・イスラム諸国との関係改善、米国本土防衛政策の実現(ミサイル防衛網、対テロ本土防衛システムの確立)、そして、南北アメリカ大陸自由貿易協定などの自由貿易圏の拡大。これらの政策を高い支持率を基盤に強力に推し進める。

 これらはブッシュ氏が大統領になる前から考えていた、今後50年のアメリカの覇権を維持するための外交政策である。今回のテロにより、どちらかと言えば、外交より内政を重視していた米国議会と国民が、「米国本土の安全保障」の重要性を初めて認識しており、集中的に取り組める状況ができている。

 ブッシュ大統領がこの絶好の瞬間を見逃すはずはない。この状況を十二分に利用してブッシュ大統領は、これらの政策の実現に向けて力強く前進を始めた。

A[パウエル国務長官が進める中東和平]

 同時テロが発生した翌日の12日、パウエル国務長官は記者会見を行い次のように述べている。「今朝、ペレス外相とアラファト議長、そしてシャロン首相と電話で話したが、私は三人に、我々がずっと望んでいるペレス外相とシャロン議長の会談を行うためにできることは何でもするよう提案した。…世界中がこの悲劇と緊張に包まれている中で、この機会を捕らえて、ミッチェル・プランを遂行する為に会談のプロセス、会談のスケジュールを決めようではないか。我々はニューヨークとワシントンで起きた危機に対応している中で、和平交渉を一気に再スタートできないか働きかけを行っている。」

 パウエル国務長官は、米国の対テロ国際協調体制構築の責任者である。アラブ・イスラム諸国の協力を得るには、米国が現在の中東の混迷を終わらせることが条件ではあろうが、元来同長官は、親アラブ派でありウォルフォヴィッツ国防副長官のような親イスラエル・リクッド右派支持者とは一線を画する人物である。同長官の弟分であるリチャード・アーミテージ国務副長官も親アラブ派であり、リチャード・ハース国務省政策企画局長もそうである。

 パウエル国務省は親アラブの色彩が非常に強く政権発足後も中東和平交渉の再スタートを模索していたが、中東の混乱はもとより、ブッシュ政権内のリクッド右派支持者や議会の同派の抵抗により、思うような展開を進められずにいた。特にウォルフォヴィッツ国防副長官やファイス国防次官などの国防総省高官との主導権争いが続いていた。

 このような背景がある中で、パウエル国務長官は、ただ単に国際協調体制構築の為だけに和平推進を進めているわけではない。

 パウエル国務長官は、17日の記者会見の中で、次の質問を記者から受けている。「アリエル・シャロン氏は現在行われている対テロ国際協調体制づくりに大きく貢献していないと思われる。アラブ諸国の多くは中東紛争をどうにかしなければならないと言っている。シャロンを抑えなければ協力体制づくりはうまくいかないのではないか。」この質問に対して同長官はこう答えている。「中東地域の状況はどうにかしなければならない。私はこの問題を推し進めるために時間を捻出している。シャロン首相と昨晩電話で長く話しをした。その時に、彼が最近のアプローチとして、自分の息子と外務省の担当者をアラファト議長と会談させたことや、これからのいくつもの会談をどのように始めるかを話し合った。私は9月11日以前も、そして、これからも直面する根底にある諸問題を決して忘れてはいない。我々はミッチェル・プランを話し合わなければならず、その為の交渉をスタートさせなければならない。これは、近い将来において我々が行わなければならない課題である。私はアメリカの外交政策が中東和平から目をそらしていないことを確約する。」

 さらに、9月18日フライシャー米大統領報道官は記者会見の中で次のように述べている。「この機会を捕らえて、イスラエルとパレスチナ側は中東和平を進めるために、できることは何でもするべきである。それこそがテロリズムと暴力を世界から減らすための大きな貢献になる。」 

 これがブッシュ大統領の真意である。

 和平推進派のイスラエルのペレス外相は、ブッシュ大統領、パウエル国務長官の意思を的確に読み取りながら、アラファト議長との会談を熱心に求めていたが、シャロン首相の反対により予定されていた23日の夜の会談が当日の閣僚会議で中止された。しかし、シャロン首相は、同日夜のテレビ演説の中でイスラエルがパレスチナ国家を承認する用意がある、と発言している。この発言によりリクッド党は大きな混乱に陥っている。

 このシャロン発言は、ペレス・アラファト会談の中止を聞いたパウエル国務長官とブッシュ大統領からの強烈な圧力を受けてのものであろう。

 このような背景のもと9月26日にペレス・アラファト会談が行われ、治安協力と停戦継続が合意された。今後信頼醸成期間をおいて和平交渉の再開へ前進する予定である。

B[ペレスとネタニヤフの対立]

 リクッド右派のネタニヤフ元首相は、11日の夜エルサレムで記者会見を行い、同時多発テロはアメリカの歴史において真珠湾攻撃のように一つのターニング・ポイントになると語り、アメリカが世界中のビン・ラーディンや、アラファト、そして、サダム・フセインと戦うことを要求した。ネタニヤフは、テロ攻撃の原因の根幹はテロリスト国家であるイラク、イラン、アフガニスタン、そしてパレスチナであり、これらは西側諸国を貪り食いたいと思っている連中である、と発言した。

 ネタニヤフ元首相は今回の同時多発テロで、アメリカを対イスラムの戦いに引きずり込むために積極的に動いている。同元首相は、訪米し9月20日に米下院の政府改革委員会で今回のテロについて証言している。その中で米国が構築している対テロ国際協調体制の中にテロ支援国家であるシリアやイラン、そしてパレスチナ自治政府が加わることは、対テロ同盟が最初から敗れていることである、と述べ、イラクなどのテロ支援国家と対決すべきだと証言している。

 ネタニヤフ元首相は、9月24日には米国で超党派の上院議員40名を集めて「可能な米国の戦略」について講演し、戦争の拡大のためアメリカ議会をロビィングしている。同元首相はブッシュ政権の高官とも会談している。会談した相手の一人には、前述したファイス国防次官がいる。

 米国内で議会と政権に「アメリカ対イスラムの戦争」を煽動しているネタニヤフ元首相は、和平推進派のペレス外相と鋭く衝突している。

 9月24日、ネタニヤフ元首相はペレス外相がアメリカの圧力を誇張し、それを利用することによりアラファトとの会談を無理やり行おうとしているとペレス外相を批判した。そして、アメリカ人は、なぜイスラエルがあわててテロリストと会おうとしているのかわからない、と述べた。これに対して、ペレス外相は25日ラジオのインタビューの中で、ネタニヤフ元首相は米国の大統領ではない。ネタニヤフはアメリカ政府がどのくらいの圧力をイスラエルにかけているかわかるはずがない、と話した。つづけて、同外相は、「ネタニヤフ元首相は、今現在アメリカにいるからといって、それで彼が米国大統領になったわけではない。米国大統領はイスラエルに対してアラファトとの会談が実現するように頼んでいる。コーリン・パウエル氏は一日に3回も電話をかけてくるぐらいだ。そもそもベンジャミン・ネタニヤフ氏は自分がアメリカを代弁しているつもりか!」と怒りを顕にしている。また、イスラエル議会議長のバーグ議員は、この元首相のことをベンジャミン・W・ネタニヤフ(ブッシュ大統領の名前はジョージ・W・ブッシュであり、W[ダブリュー]が彼のニック・ネーム的な呼び方である)と呼び、元首相がアメリカの悲劇を自分の立場を上げるために利用している、と批判している。

C[パウエルとウォルフォヴィッツの対立]

 ブッシュ政権内部では、テロに対する報復についての戦略目標を巡る対立が起きていた。

 パウエル国務長官に代表される穏健派は、同時多発テロに対する報復攻撃で「アメリカ対イスラムの戦争」という構図を何としても避けたい。それゆえに、ビン・ラディーンの身柄確保、又は殺害。そしてアル・カイダと呼ばれるビン・ラーディンのテロリスト基地の破壊(ヘロインの栽培地域の撲滅も含む)を第一段階の目標と限定している。タリバン政権がビン・ラーディンの身柄を引き渡さない場合、タリバン政権の中の穏健派と協力して地域に大きな混乱を伴わない政権クーデターを行わせ、親米政権擁立が望ましいと考えている。タリバン政権自体を倒す場合の軍事的リスクはもとより、150万とも予想される大量の難民が周辺諸国に流出し、パキスタン、イラン、中央アジア諸国が不安定化する事を恐れている。特に核を持つパキスタンの政情不安定化は何としても避けたいと考えている。

 ウォルフォヴィッツ国防副長官に代表される強硬派は、戦争の拡大を狙っており、特にイラクのフセイン政権の打倒、テロリスト支援国家であるシリアやイランなどにも強硬な対応を行い、米国同時多発テロを利用して「キリスト教徒+ユダヤ教徒対イスラム教徒」という世界大戦争にエスカレートさせることを狙っている。前述したネタニヤフ元首相などのリクッド右派もその方向にアメリカを引っ張ることに全力を尽くしている。

 11年前の湾岸戦争時にも同じ対立があった。

 パウエル国務長官は、当時、ブッシュ政権の統合幕僚会議議長であった。ウォルフォヴィッツ国防副長官は、同じく当時、国防次官で国防総省のナンバー3のポストにいたのである。パウエル議長は経済制裁を続けて武力行使を避けようとしていたが、ウォルフォヴィッツ国防次官は武力行使を主張し、米国を中心とした多国籍軍の戦略目標をなんとか、フセイン政権打倒まで拡大しようとしていた人物である。ウォルフォヴィッツ氏はユダヤ系であり、彼の親戚はイスラエルに住んでいるという。彼はリクッド右派の中でも最も強硬派であるモッシュ・アレン元国防相と親しい人物であり、現ブッシュ政権のリクッド右派支持の代表格である。

 第一段階の戦略目標を巡っての対立軸は、現在のところまで次の様に色分けできる。

 パウエル派(ブッシュ派)

ブッシュ大統領、ブッシュ元大統領、スコウクロフト元国家安全保障補佐官、チェイニー副大統領、リチャード・アーミテージ国務副長官、リチャード・ハース国務省政策企画局長、ストロー英外相、ペレス・イスラエル外相、バラク・イスラエル元首相、プーチン露大統領、アラブ・イスラム諸国、ワシントン・ポスト紙、ロスアンゼルス・タイムズ紙、英BBC。

 ウォルフォヴィッツ派(ネタニヤフ派)

ネタニヤフ元首相、シャロン首相、リーバーマン米上院議員、モッシュ・アレン・イスラエル元国防相、ジーン・カークパトリック元国連大使、ジェームス・ウールジー元CIA長官、ジェシー・ヘルムズ米上院議員、ニュート・ギングリッチ元米下院議長、ビル・ベネット元教育長官、ルイス・リビー副大統領主席補佐官、ダグラス・ファイス国防次官、ワシントン・タイムズ紙、ウォールストリート・ジャーナル紙。

 この戦略目標を巡る対立に関しては、現段階では、イラクが11日の同時多発テロに関与していたかどうかが一つの焦点になっていた。

 ブッシュ政権はテロリストに対する報復攻撃を含めた対応を11日の夜から対テロ国際協調体制の構築を手始めに始動していた。そして、犯人グループの確証探しと平行して具体的な軍事行動の計画に入ったのは9月15日からである。その前後以来、CBSテレビやワシントン・タイムズ紙等がテロを行った犯人グループの一人がイラクの情報当局者とコンタクトを取っていた、との報道を行い、パウエル派とウォルフォヴィッツ派は戦略目標を巡り大きな対立の山場を迎えていた。しかし、20日のファイナンシャル・タイムズ紙は、英国の外務省の見解として、現在の所までイラクの関与の証拠はない、というコメントを載せている。また、23日のエルサレム・ポスト紙の報道でもイスラエル国防軍の高官がイラクの関与の可能性を証拠づけるものはない、と語っている。これは英国のジェーンズ・フォーリン・レポートがイスラエル国防軍の情報部の話として、イラク関与の疑いを報道したことに答えたものである。

 これらの情報を受けて23日、ブッシュ大統領は第一段階の戦略目標としてビン・ラーディンと同グループの基地破壊に限定した戦略目標を決定する。

 これは非常に抑制された政策であり、ブッシュ大統領は第一回目の大きなハードルを越えたと考えてよいだろう。

 第一段階はパウエル派が制したのである。しかし、第二段階、第三段階、第四段階の展開においては、予断を許さない状況である。

 迅速かつ的確な手を打つパウエル国務長官は、トルーマン政権のジョージ・マーシャル国務長官のように歴史に名を残す名国務長官になるであろう。それゆえに、11日の同時多発テロの背後にいる連中から見れば、最も消したい相手である。

D[アフガン難民大量流出を避けた報復攻撃]

 第一戦略目標が定まった今、米軍はどのような軍事行動を取るのであろうか。

 ブッシュ政権は、米英の特殊部隊を中心として攻撃をしかけ、戦車などの大規模な地上軍の投入は考えていない。アフガンのベトナム戦争化を避けることはもちろんであり、第一戦略目標を達成した場合、米英軍は撤退する。特殊部隊での報復活動はビン・ラーディン確保又は殺害が目標の一つであり、特殊部隊並びに米英軍全体の準備が完了してもビン・ラーディンの所在を正確に突き止めない限り、本格的な軍事活動は展開しない。9月29日現在において米英軍は所在地把握のための情報収集とタリバン政権内部のクーデター工作の両構えで水面下で活動を開始している。

 繰り返しになるが、ブッシュ政権は大量の難民流出による地域の不安定化を最も警戒している。地域の安定をできるだけ維持しながら、戦略目標を達成する非常に難しい軍事作戦ではあるが、これに関しては周辺諸国はもとより、ロシアもアメリカと利害が一致している。

E[トム・リッジ知事の国土安全保障局長への起用]

 パウエル派とウォルフォヴィッツ派の主導権争いが続いていた20日、ブッシュ大統領は議会で演説を行い、テロリストから米国本土を防衛する為、閣僚級のポストとして国土安全保障局を創設し、初代局長にペンシルベニア州知事のトム・リッジ氏を起用することを発表した。

 注目したいのはトム・リッジ知事の起用である。

 リッジ氏は現在2期目のペンシルベニア州知事を務めている。連邦下院議員を6期務めた経験があり現在56歳。貧しい家庭に生まれながらも奨学金を得てハーバード大学を卒業し、ロー・スクールの1年生の時にベトナム戦争に徴兵され陸軍に入隊。ベトナム戦争で活躍し勲章を受けている。宗教はカトリック教徒である。昨年の大統領選挙時にブッシュ大統領候補の副大統領候補に名前が挙がったが、自分から辞退したと言われている。

 彼はブッシュ大統領の親しい友人の一人で良きアドヴァイザーでもある。

 体はがっしりと大きく、いかつい顔をしたリッジ氏は、古き良きアメリカの頑固親父そのものである。ブッシュ大統領と思想・価値観を共有する真の友人である。

 リッジ知事は連邦下院議員時代から核兵器削減派であり、穏健保守派である。それゆえに共和党右派の評判があまり良くない。ブッシュ大統領は、パウエル国務長官の薦めもありリッジ知事を国防長官にしたかったのだが、党内右派の反対によりできなかった。

 リッジ知事はパウエル派であり、ウォルフォヴィッツ派とは大きく距離を置いている。筆者は20日のブッシュ演説でリッジ氏が指名されたことにより、パウエル派対ウォルフォヴィッツ派の主導権争いは、大きくパウエル派に傾いていると直感した。

 ブッシュ大統領とすれば、自分の支持率が高いうちに、リッジ知事を閣内の重要ポジションにつかせて、昨年以来心臓発作4回の病歴があるチェイニー副大統領や、「撃ちてし止まん」の精神で国防総省改革を進めるラムズフェルド国防長官らに何かあった場合には、その後任に起用しようとの腹であろう。

 リッジ知事が国土安全保障局長に就任することにより、米国は本格的にテロリズムに対する本土防衛を進めることができる。国土安全保障局の細かい権限などは、これから議会でも論議されるが、FBI、CIA、FEMAなどの省庁の対テロ部門を統括していく予定である。これに加えてミサイル防衛網が構築されれば、米国本土防衛システムは完成されることになる。

 世界最強の陸、海、空の軍隊を持つ米国とすれば、米国本土の安全保障を脅かすのは空からのミサイル攻撃によるものか、今回のテロのようなものしかありえない。それゆえに、本土防衛の為には第一に、テロリズム対策として国土安全保障局を創設し、第二に空からのミサイル攻撃対策としてミサイル防衛網を構築する。この両方が整って初めて本土防衛システムが完成することになる。ブッシュ政権は、本土防衛の大義名分のもと両方を推し進めてゆくであろう。

F[マネーロンダリング対策]

 ブッシュ政権は、EUが進める資金洗浄対策について、今回のテロにより、本格的に協

力し、より厳しい取締りを行う方針である。これにより資金洗浄対策において日米欧の協

力体制が確立されることになる。財務省や司法省は米議会に対してより厳しい法律を制定

するよう提案している。また、財務省が中心となりFBI、司法省などが参加して「The 

Foreign Terrorist Asset Tracking Center」(外国テロリスト資産監視センター)を

設立しテロリストの資金を監視する専門チームを発足させている。

 米国の対資金洗浄政策は大きく転換したのである。

G[ブッシュ政権内で大きな変化が起こる]

 今回の同時多発テロは、世界勢力地図の大変動を引き起こす可能性がある。

 イランが今回の対テロ国際協調体制に加わることにより、イランと英米との関係は改善

する可能性が高い。ブッシュ=パウエルの意を受けた英ストロー外相のイラン訪問は19

79年の宗教革命以来初めてのことである。ブッシュ政権はイラン・リビア法の延長問題

においても、議会が5年の延長を求めている中で3年の延長を主張して、対イラン関係の

改善を模索していた。同法案は最終的に議会側の5年延長案が通ったが、ブッシュ政権が

イランとの新しい関係を模索していることが明らかになった。また、この法案の審議中に

は、ブッシュ政権に近いスコウクロフト元国家安全保障補佐官が中心となり、イランとの

関係改善を提言するレポートを発表している。

 ロシアのプーチン大統領もブッシュ政権に対して積極的な協力を行っている。プーチン

大統領は協力と引き換えに、チェチェン問題の黙認、ロシア対外債務についての協力など

をアメリカから引き出した可能性が高い。

 同時多発テロが発生した11日にアメリカ軍は厳戒体制を敷いたが、ロシア軍はアメリ

カ軍に対抗して厳戒体制を取ることはしなかった。それについてブッシュ大統領は、「冷戦

が完全に終結したのを実感した。」と述べている。この事はロシアに対するアメリカ軍部並

びに共和党保守派の信頼度が高まるきっかけになる可能性がある。

 米国のミサイル防衛網構築によるABM条約問題にしても、7月から8月の米露交渉で

ロシア側の対応の変化が見え始めている。ロシアのプーチン大統領は、安全保障のプロ集

団である共和党ブッシュ政権が政権を担当している間に、米露同盟を確固たるものにした

いと考えているであろう。それゆえに、共通の敵であるイスラム過激派テロリスト集団と

それを支えるアングラマネー・ネットワーク壊滅へ、断固たる共同歩調を取っている。な

らず者国家に対応してはミサイル防衛網、そして、その下請け的存在であるテロリストに

対しては情報交換を含めて米露協力関係が作られていく可能性が高い。これらが米露同盟

の大きな柱の一つになる。

 大国同士の関係は安定が最重要であり、共通の利益をもとに条件闘争が外交交渉として

行われる。今後、米露関係は、このような成熟した二国間関係へと進化してゆくであろう。

 ブッシュ=パウエルのコンビは中東紛争が今回の根底にある問題であることは、当然な

がら承知している。注目すべきは、ブッシュ=パウエルは中東和平を進めることを決断し、

和平反対派の資金源である麻薬や武器密輸の資金洗浄も断固として取締ることも決断して

いる。両方に本格的に取り組むことにより、ブッシュ政権内のリクッド右派支持者の人間

が転向または、政権から遠ざかる可能性が高い。

 ブッシュ政権内部の人事変化も予想される。

 現在米議会においてマネーロンダリング対策の法案について論議されているが、民主党

のリクッド右派支持者の上院議員が厳しい法案を主張している。今回の同時多発テロはア

メリカの国内政治地図も変えるのか注目されるところである。     (9月29記)