内閣官房 国民保護ポータルサイト (2005・09)


広義の有事法制(非常事態・危機管理法令)の概念図
(1998年6月初稿、2004年03月修正版)

  作成   宝 珠 山    昇   

 広義の有事法制は、次の概念図によって包括される種々様々の有事、即ち、人為的・自然的に発生する重大・非常・緊急事態を、それぞれの関係主体が相互に協力して、警戒監視し、予防に努め、予防できなかったものは迅速・適切に対処して被害を最小限にとどめ、早期に復旧するため、持ち場、持ち場で最善の協力行動ができるルールを規定する総合的な危機管理システムと観念する。

行 ・ 列 平和時 緊張時 対処時 武器の使用等に関する規定
日本有事 1・1 1・2 1・3 国際の法規及び慣例による
極東有事 2・1 2・2 2・3 日本独自の厳しい制限あり
世界有事 3・1 3・2 3・3 日本独自の厳しい制限あり

説明

  1. 関係する主体は、各有事によって異なるが、国(自衛隊、海上保安庁、その他の諸機関)、自治体(警察、消防、医療機関等)、企業、団体、住民、外国軍隊等(米軍、多国籍軍、国連軍など)を考慮している。21世紀の新しい脅威、テロへの対応は、これらの関係主体が、シームレスに、相互に緊密に協力できる体制を構築することが重要であり、米国の「国土安全保障省」の創設はこのための大改革(連邦機構の1947年以来の、50年ぶりのもの)であるとされている。
  2. 上図は、有事を、日本有事、極東有事及び世界有事の三行に、対応する時期を平和時、緊張時及び対処時の三列に区分し、これによって構成される三行三列、九個のマスに分割して観念し、包括的な危機管理法制を考察する概念図である。
  3. 日本有事は、わが国が直接又は間接に侵略され、防衛出動の対象となる事態である。また、領域警備、国内でのテロ対応などを含めて考える。多くの場合、他国や国際機関の協力・援助を必要とするときである。
  4. 極東有事は、日本有事以外の極東有事であり、「周辺事態安全確保法」の対象とする日本周辺事態とそれ以外の事態に分けて考える場合もある。いずれも、日本の安全に深いかかわりを持つものであり、日本の対応、協力のあり方が問われる事態である。
  5. 世界有事は、日本有事及び極東有事以外の有事であり、日本の国際協力のあり方が問われる事態である。
  6. 平和時には、警戒監視、研究・協議、訓練、物資の備蓄(原油、希少金属、予防接種剤、解毒剤など)、復興支援などを含むものと考えている。
  7. 地震などの突発性の有事では、緊張時、即ち、緊急準備に当てる時間は少ないものと考えられる。
  8. 「広義の有事法制」は、「包括的な有事法制」と呼んでも良いが、現在の日本でのこの用語は、日本有事の場合に限定しているので、これよりも広いものを観念している。
  9. 政府が、昭和52年以来「有事法制の研究」として進めているものは、第一行第三列(1・3のマス)、即ち、日本有事・対処時のうち、主として自衛隊の行動に関するものであり、「狭義の有事法制」と考えている。
  10. 住民の避難・誘導を適切に行なう措置などについては「国民保護法等有事関連七法案&3条約承認案」として2004年3月9日閣議決定し、国会に提出、審議されている。
  11. また、来援してくる米軍が円滑に行動できるための法制の改善については、上記七法案の一つ「米軍行動円滑化法案」として提出されている。
  12. 1・1〜1.3のマスでも、領域警備、テロ対応などには不備があるが、上記七法案により改善されている。
  13. 2・3のマスは、日本が米国から各種の協力を要望される事態である。現行では「日米地位協定」、「周辺事態安全確保法」、「日米物品役務相互融通協定」(ACSA)」などにより限定した協力はできるが、同盟国に対するものとしては不十分である。
  14. 3・3のマスは、日本が国連などから各種の協力を要望される事態である。ここで活用される現行法は、「イラク復興支援特別措置法」、「テロ対策特別措置法」、「国連平和維持活動協力法」、「国際緊急援助隊派遣法」などがあるが、先進国の水準には達していないものが多い。

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広義の有事法制充実の必要性-(2003年1月作成 : 2005年4月一部追補)

広義の有事法制関連の報道抜粋-(2002年1月~               )

北朝鮮特別措置法関連報道抜粋-(2003年11月22日~           )


参考1:国際平和協力法による平和維持隊への参加に当っての基本方針(いわゆる5原則)

  1. 紛争当事者の間で停戦の合意が成立していること。
  2. 当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が維持隊の活動及び日本の参加に同意していること。
  3. 当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的な立場を厳守すること。
  4. 上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、日本から参加した部隊は撤収することができること。
  5. 武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

参考2:国際協力を行なうことができる場合の5条件(緩和した私案)
 国際協力を行なうことができる場合について、論議のために一例を示せば、次の5条件が全て充足するものを想定している。発生した事態がこの条件を満たすかどうかの判断は、行政府が戦略的・主体的に行なうのが効率的であると考える。これに伴い、「国際の法規及び慣例を遵守して武器を使用できる」ことに改める。これらは日米関係では国際協力・負担の合理化・平等化であり、憲法解釈では自衛権行使の(自己主義的)規制の緩和である。

  1. 国際法ないし国際機関が要請ないし許容するもの。
  2. 協力・支援を受ける国が要請ないし許容するもの。
  3. 日米安保条約の円滑な運用に有益であるもの。
  4. 日本の国益を増進に寄与し、国民が支持するもの。
  5. 日本の国力が受容し得るもの。

 これが緩和されれば、例えば、アフガニスタンの治安回復を支援する多国籍軍や米軍の対テロ行動への協力、参加の可否を、主体的・戦略的に判断できるようになり、活動範囲は国際水準に近づき、新しい国際秩序の形成に大きな貢献ができるようになる。これまでのように「憲法上許されない」として、論議さえ封殺し、思考停止するのではなく、流動して止まない国際情勢に柔軟に対応して、日本の独立と平和と繁栄を確保し続ける方途を冷静に自主的・戦略的に選択するシステムを持つことになる。泥縄行為をなくすことにもなる。

参考3:「国際の法規及び慣例によるべき場合」の規定例
 *1 自衛隊法第八十八条(防衛出動時の武力行使)  第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。
 2  前項の武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。

 *2 同第八十四条(領空侵犯に対する措置)  長官は、外国の航空機が国際法規又は航空法 (昭和二十七年法律第二百三十一号)その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。

参考4:PKO活動における武器使用の国際標準=「任務遂行を実力で妨げる行為の排除」

 (産経新聞2001年9月11日主張より抜粋)=PKOの行動基準には「加盟国が差し出した軍事要員は、作戦的な事柄では派遣国の指示を受けず、国連軍事司令官の命令のみを受ける。指揮系統が順守されないと、作戦上重大な問題を生じる」と示されている。また、日本が早々と加盟した「国連要員の安全に関する条約」では国連要員らの安全確保のためにすべての措置をとる義務が課せられている。

 それなのに、十年間武器使用基準が改められなかったのは、自衛隊の海外での武器使用が憲法の禁じる武力、集団的自衛権の行使になる、とする意見があったからだ。しかし、国連は国家ではないし、PKOでの武力は他国の領土、政治的独立を侵すために行使されるわけではない。誤った議論に惑わされず、隊員たちが十分な貢献をできるよう、PKO法や派遣五原則の武器使用基準を改めておきたい。

 (産経新聞2001年10月21日主張より抜粋)= PKO法改正では武器使用基準も国際基準に合わせるべきだろう。現行ではPKO隊員の武器使用は自らと同僚の生命を守るだけに限定されている。他国の要員を守れる緩和にとどまらず、国際基準として諸外国が認めている「任務遂行を実力で妨げる行為の排除」も容認すべきである。

 (産経新聞2001年10月31日主張より抜粋)=実は、国際基準とかけ離れた日本のPKO活動はもはや限界にきている。日本のPKOへの派遣人員は世界五十七位で全体の0.1%、四十五人でしかない。福田康夫官房長官は「仕事がないからだ」と説明している。 国連は、任務遂行を実力でもって妨げる行為を排除するための武器使用基準(SOP)を認めている。日本だけがこれを認めず、危険はない安全なPKOをえり好みした結果といえる。

参考5:武器の使用にかかわる規定の改正(2001年11月)

 国際平和協力法が施行された後、派遣の経験を積み重ねるにつれて国際平和協力業務に従事する自衛官に必要な武器使用のあり方について、いくつかの問題点が提起された。そして、'98年の同法の改正により、それまで個々の隊員の判断とされていた武器の使用について、現場に上官がいるときは、原則として、その命令によらなければならないものとされた。
 今般、PKF本体業務凍結解除に併せて、国際平和協力業務の一層の円滑な実施を確保するため、武器を使用して防衛できる対象の拡大及び武器などの防護のための武器の使用について同法の改正が行われた。また、同趣旨の規定が周辺事態安全確保法、テロ対策特別措置法等にも盛り込まれた。

 @ 武器の使用による防衛対象の拡大 :  改正前の国際平和協力法においては、武器の使用により防衛することができる対象は、自己又は自己とともに現場に所在する他の国際平和協力隊員に限られていた。

 しかしながら、平和維持隊に参加する各国の部隊の要員が選挙監視要員などと同一の場所で活動することはあり得るし、また、平和維持隊が他の国際平和協力業務を行う者と複合的に展開されるケースが増加している。このため、国際平和協力業務に従事する自衛官などが行う活動の態様や場所、どのような者がその職務に関連して行動をともにすることが想定されるかなどの実態を考慮し、いかなる範囲が防衛対象として適当であるか検討されてきた。

 このような検討の結果、職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者を武器の使用による防衛対象に加えることを内容とする改正を行った。このような者の生命又は身体を防衛するための必要最小限の武器の使用は、「いわば自己保存のための自然権的権利というべきもの」であって、憲法上の問題を生じるものではなく、また、国際平和協力業務の円滑な実施にも資するものである。

 A 武器などの防護のための武器の使用 : 自衛隊法第95条の規定により、武器、船舶、航空機、車両などを職務上警護する自衛官は、これらの武器などを防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。この規定は、原則として海外においても適用されるが、改正前の国際平和協力法においては、派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官については、適用しないこととされていた。今回の改正により、自衛隊法第95条の規定を適用し、武器などの防護のための武器の使用を可能となった。

参考6:日米防衛協力等の内容、等


その他:

○日本国憲法と防衛力の保有、集団的自衛権の行使等についての政府見解などについては解説と主張の部に掲載の自衛権行使の規制緩和が必要などを、また、わが国の広義の有事法制の現状と課題などについては、「9・11テロ等を踏み台として飛躍を」、「2000年中期防等への期待」の後半などを参照されたい。

「米国の国土安全保障戦略」には、わが国の有事法制整備にとって、参考となる内容が豊富に含まれている。詳しくは、次の発表などを参照。National Strategy for Homeland Security- White House,Jul. 16, 2002-President Bush today released the first National Strategy for Homeland Security. The purpose of the Strategy is to mobilize and organize our Nation to secure the U.S. homeland from terrorist attacks. Executive Summary : Read the National Strategy